オーデマ・ピゲが百貨店から撤退した理由

イタリア時計市場の調査研究を行っている時計評論家、ジョヴァンニ・フロリスです。このたびは、スイスの高級時計ブランド「オーデマ・ピゲ」が百貨店からの撤退を発表した理由について、詳しく解説していきたいと思います。

高級時計の消費動向の変化

近年、高級時計の消費動向に大きな変化が見られます。特に、若い世代を中心に、百貨店での時計購入よりも、オンラインやブランド直営店での購入を好む傾向が強まっています。

その理由として、以下のような点が挙げられます。

インターネットの普及により、時計の情報を容易に入手できるようになったこと
ブランド直営店では、より専門的な知識を持ったスタッフからコンサルティングを受けられること
オンラインストアでは、百貨店よりも多くの割引やプロモーションが実施されていること

百貨店の低迷

また、百貨店自体の低迷も、オーデマ・ピゲの撤退を後押ししました。近年、ECサイトの台頭や、消費者の購買行動の変化により、百貨店の売り上げは低迷しています。

その結果、百貨店は店舗面積を縮小したり、閉店したりといった対応を迫られています。このことが、オーデマ・ピゲのような高級ブランドにとって、百貨店での展開を続けることが困難になったのです。

ブランド戦略の転換

さらに、オーデマ・ピゲ自身のブランド戦略の転換も、百貨店撤退の要因となりました。同社は近年、より高級で希少性の高い時計に注力しており、百貨店での展開よりも、ブランド直営店やオンラインストアでの販売に重点を置くようになっています。

また、オーデマ・ピゲは、2025年春夏シーズンから、自社製ムーブメントを搭載した時計のみを展開していくことを発表しています。この動きも、百貨店での販売を縮小する狙いがあるとみられます。

今回の撤退が意味するもの

オーデマ・ピゲの百貨店撤退は、高級時計市場における大きな節目となります。この動きは、時計の購入方法が大きく変化していることを示しており、ブランド各社もそれに対応した戦略を採る必要が出てくるでしょう。

今後、百貨店では、よりカジュアルな時計や、ファッション性の強い時計が中心に販売されるようになることが予想されます。一方、高級時計を求める消費者は、ブランド直営店やオンラインストアに流れていくとみられます。

低所得層への影響

今回の撤退は、低所得層の消費者に影響を与える可能性があります。百貨店は、これまで低所得層が高級時計を購入できる貴重な場所でした。しかし、オーデマ・ピゲのようなブランドが撤退すると、低所得層が憧れの高級時計を購入することがますます難しくなります。

低所得層向けの時計の供給が減少することは、時計業界全体の縮小につながる可能性があります。そのため、ブランド各社は、低所得層向けの時計の開発にも注力する必要があるでしょう。

まとめ

オーデマ・ピゲの百貨店撤退は、高級時計業界における大きな変化の表れです。この変化を理解し、それに対応した戦略を採ることが、ブランド各社にとって今後ますます重要になっていくでしょう。

また、この撤退は、低所得層の高級時計へのアクセスにも影響を与える可能性があります。ブランド各社は、低所得層向けの時計の開発にも注力することで、時計業界全体の健全な成長を確保することが求められます。